小宮山としえのHRMトピック1

働き方改革と幸福度調査(世界)

「幸せな社員は創造性3倍、労働生産性1.3倍」。慶応義塾大学院の前野隆司教授は、働き方改革における幸福度の重要性を説いており、「幸せな社員は不幸せな社員よりも、創造性が3倍高い」「幸せな社員は不幸せな社員よりも、労働生産性が1.3倍高い」という研究結果を示しています。会社の人事労務部門(HRM)にとりましても、従業員の幸福度は関心事でしょう。
国連がスポンサーになって行なっている世界を対象にした調査に『世界幸福度ランキング』があります。その最新版(2019年版)の発表で、日本の幸福度は調査対象となった世界157カ国中、58位。2015年46位。2016年53位。2017年51位。2018年54位でした。
幸福度や幸せ感を図る調査には他にも様々なものがあり、アンケートの質問肢や質問尺度、統計方法や、統計分析によって、意図的か否かを問わず、偏ったり、ぶれてしまうことは少なくありません。
私も、従業員満足度調査で統計分析を用いるときに、測る尺度や統計方法について、何度も見直しや検討をします。幸福度は、測る尺度によって捉え方は、違いますが、『自分は今、幸せと言えるのか?』を考えるきっかけになることでしょう。
世界で比較する幸福度について、この幸福度を図る指標やそのランクインした国について振り返ることで、『幸福度は、何によって図るのか』『何をもって幸福と言えるのだろうか』と話し合うことができる大変興味深いテーマだと思います。
国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(UNSDSN)」が、発表した「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」によると、幸福度トップ3は、『フィンランド』『デンマーク』『ノルウェー』でした。ちなみに、トップ10は以下のとおりです。フィンランド デンマーク ノルウェー アイスランド オランダ スイス スウェーデン ニュージーランド カナダ オーストリアです。北欧諸国が半数にランクインしているのが大きな特徴です。
この報告による幸福度は、(1)1人当たり国民総生産(GDP)、(2)健康寿命、(3)社会的支援、(4)人生の選択の自由、(5)寛大さ、(6)汚職が多いと感じるかの6つの指標を中心に算出しているようです。(3)~(6)は、ギャラップ世論調査(Gallup World Poll)による電話または対面インタビューへの回答に基づいているとのこと。(3)社会的支援は、「もし困ったことがあったら、いつでも頼ることができる親戚や友人はいますか?」という質問への回答、(5)寛大さは、「最近1カ月間で、慈善団体に寄付したことはありますか?」という質問への回答をそれぞれもとにしているようです。
ここで1位と2位になった『フィンランド』と『デンマーク』という会社に、思いを馳せてみたいと思います。
1位の『フィンランド』に関する私のイメージといえば、「オーロラ」「ムーミン」「サウナ」ですが、フィンランドの働き方でいえば、約8割の女性がフルタイムで、8時間労働で、退社は15時から17時の間。すべての子供たちに保育施設を用意することが自治体の法律にあり、働いていなくても保育施設には入れる権利が用意されているようです。
祝日そのものは10日と日本の2019年の17日に比較すると少ないようですが、夏季休暇が4週間、冬季休暇が2週間。他に未就学、就学児童がいる家庭は別途年次有給休暇が付与されます。
日本の法律では、5日を強制しているレベルに比較して、最低5週間の有給休暇を法律で義務づけていますので、雲泥の差があるといえます。フィンランドでは戦後から、所定の時間内で効率よく働くことを追求し、長時間労働や残業するという概念がないようです。先日、北欧出身で、日本で働いている方と、お話をしたら、日本のすべての企業の労働者は働きすぎ、ブラック企業だと言っていました。
では、2位になった『デンマーク』という国に思いを馳せて、幸福度を取り巻く状況を考えてみたいと思います。①労働環境(一般的に週37時間労働 フレキシブルな労働市場、手厚い失業保険、積極的労働市場政策など働きやすい)②5週間~6週間の有給休暇③女性の就職率は7割以上④教育費は大学まで無料⑤20歳以上の学生に給付金⑥医療サービスの充実(医療費無料)。
もちろん、これらは、良い面ばかりではなく、手厚い福祉(共助のシステム)のためには一方で税金を高くせざるを得ません。消費税は25%で、所得税も40%強~です。
福祉や失業保険等の充実が、転職を促進したり、逆に就労意欲を失わせ、さらに、自殺が多いことにつながるとも指摘されています。また、女性の高い就職率によって自立化がすすむためなのか、離婚が多いということも話題になっています。
私はデンマークの『通勤事情』が興味深いです。デンマークは自転車での通勤通学が4割を超え、首都コペンハーゲンでは、2017年データで60%が自転車通勤だそうです。
私がテレビでみた映像では首都高速なみの道路を、自転車が快適に走っている様子や、マンションの上位の部屋から、自転車専用のスロープで、簡単に地上に向けて下っていくものでした。自転車でも、車より早く目的地につくことができる上に、費用もかからず、エクササイズにもなります。電車にそのまま自転車と一緒に乗り込む様子は圧巻でした。自転車道路整備のインフラにお金がかかっても、車の事故による死亡やけがが減り、排気ガスの問題が解消され、国民が健康になれば、インフラ投資は価値のあるものとなります。
私も自転車で渋谷界隈を走ることがありますが、決して楽ではありません。車と並走したり、自転車をとめるスペースの確保も容易ではありません。Uber Eatsを運ぶお兄さん達はよく頑張っているなと横目でみています。

・世界幸福度報告書(World Happiness Report) https://worldhappiness.report/

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