私たち社会保険労務士や人事コンサルタントは、会社を、そして、人事部を応援サポートする仕事、役割を担っていると思います。経営者、人事担当者と寄り添いながら、法律的なこと、コンプライアンス、考えられるリスク、想定される課題、起こりうる問題についてお伝えします。人事のマンパワーが足りない部分や、必要だと感じる部分等は、社外人事部長として、その役割を代行しています。
そこで、人事部が果たすべき役割とは何かを考えてみたいと思います。
人事部の主な仕事内容とは、「人材に関するあらゆる業務」をトータル的に扱う部署です。つまり、 「ヒト」という「人材」「人財」という経営資源を最大限に活用することに他なりません。
「ヒト、モノ、カネ、情報」というように、ヒトは、経営資源のなかで最も、はじめにくるもので、最も重要なものです。会社は、人という従業員が集まって、チーム、グループ、組織を形成しています。その人を最大限活用することによって、強い組織を形成し、生産性をあげることにつながります。
ある会社が、人事部不要論で、人事を設けなかったことがありました。規模が小さい場合は、経営者、特に社長が人事の役割を担っています。社長自らが採用し、従業員と定期的な面談をし、話をきき、評価をします。モチベーションをあげるためには、励ましたり、叱咤激励もします。しかし、その企業は、500人を超える従業員がいて、経営層が人事の役割を担えませんでした。
専門的な業務を外注の業者に任せ、人事そのものを作らなかったのです。その結果チームごとにその上長、チーム長を気にする行動が目立ち始め、全体としての仕組み、マネジメントができなくなってしまったのです。
このような状態では、内部にばかりエネルギーを使ってしまい、競合他社と戦えないばかりか、計画的な人材の採用や、人材育成ができません。
人事部は、「採用から配置、人事評価と処遇、人材育成、組織活性化、退職」に至るまでを、経営戦略や人事戦略に沿ってトータル的に、扱う必要があります。
デイビッド・ウルリッチ氏(ミシガン大学)は、著書「MBAの人材戦略」の中で、人事部とは、以下の4つの役割をもつとしています。『戦略パートナー(Strategic Partner)』『変革のエージェント(Change Agent)』『従業員のチャンピオン(Employee Champion)』『人材管理のエキスパート(Administrative Expert)』です。
社労士や人事コンサルタントは、人事部の役割のなかでも、人材管理のお手伝い、サポートをします。
人事評価、処遇として、人事制度の構築を行ないます。組織の経営戦略にそって、その組織が求めている従業員像を明らかにし、人事評価制度を策定します。制度は、企業理念、ミッション、創業者や代表の考え方、意見、思いを反映させるべく、十分なヒアリングを行ないます。それらがない場合には、一緒に作成することもあります。
評価制度には、役割等級制度や、それに関連する報酬制度を決めていきます。この評価制度によって、従業員が不安を感じたり、給料が下がるのではないかと心配するようではよくありません。制度構築から1年〜2年は、原則として給料が下がらないこととし、部下の評価については、明確な評価基準をつくり、管理者研修を通じて、公平性、平等性、不公平感を排除していきます。そして、従業員がモチベーションを向上できるような仕組み、配置の適正化を図る必要があります。
会社が、職場内研修や職場外研修をするなど、従業員が自ら考えて、仕事ができるようになること、その組織内・組織外においても活用できるような、キャリア向上をサポートしていくことが求められます。評価制度を整えることなど、従業員を気にかける、関心をもつ、そして、育成していくことが、組織内自尊感情の向上(組織の中で、大切にされている実感)、組織コミットメントの向上、ワークエンゲージメント向上につながるのではないでしょうか。